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11.給与


[定義]
今回採用された人材に対して支給する賃金のこと。


[1]給与表記の原則 

・今回の募集(提示された職種・雇用形態・資格・労働条件)に対して支払われることが保障
される最下限の給与金額を、項目の先頭に必ず記載する。給与例やメッセージを冒頭に配置す
ることは出来ない。

・給与区分(固定給、歩合給、業績給)+給与形態(月給、年俸、週給、日給、時給)+給与
金額の組み合わせで記載する。
※「固定給」という言葉は省略可能。

・「円」や「ドル」などの通貨単位を必ず付記する。

・勤務先の地域の最低賃金(時給換算時)を下回る金額は記載することができない。

・応募条件に該当する、すべての応募者に該当する最低保証額を明記すること。
学歴等の条件別給与となる場合、一部の例示だけでは不可。今回の採用対象全体の中で最下限
となる給与額を必ず明示すること。

・「年収」「月収」「月額」などは給与形態とみなさない。

・「約」「程度」「予定」など、曖昧な記載や具体的な金額が示されていない記載は不可。

■最低賃金について
最低賃金は都道府県ごとに定められており、毎年 10 月頃に改定される。また特定の産業につい
ては、「特定(産業別)最低賃金」が定められている。
最低賃金は「基本給+一律手当」の額の時給換算分であり、通勤手当、家族手当といった支給
条件が各人によって異なる諸手当、歩合給、賞与、残業代などは含まない。

○月給 25 万円
○月給 23 万円~30 万円
×月給 20 万円(予定)
×月給 18 万~25 万円程度
×時給約 900 円
×月額 30 万円


[2]給与形態の分類 


■“収入”だけの表記は不可
・「年俸」と「年収」、「月給」と「月収」は意味が異なる。

・収入例を補足として記載することは可能だが、先頭に最低保証額が記載されていることが前
提となる。

◎ 月給(年俸) …… 1カ月(1 年)単位で定められた固定給。
◎ 月収(年収) …… 月(年)に得られる総収入(あらゆる収入の合算)。

※月収(年収)は、その時々で変動する賃金を含むため、固定給のように収入が保障されてい
ると誤解を与える表記はできない。あくまでも、「収入例」としての表記にとどめる。

<月給と月収、年収の関係>

※その他手当(属性対応分)
⇒役職手当、家族手当、地域手当、皆勤手当 など
※時間外手当
⇒残業手当、深夜残業手当、休日出勤手当 など
※業績給(毎月)
⇒毎月支払われるインセンティブ など
※業績給(1 ヵ月超)
⇒3 ヵ月や半期といった単位で支払われるインセンティブ など





左記表*1
日給×勤務日数の総額を、月 1 回
まとめて支払う(日給の月払い)
場合は、「日給月給」には該当し
ない。

×日給月給 1 万 2,000 円以上
⇒日給の月払いの場合は、
「日給 1 万 2000 円以上 ※月
払い」のように表記する。

左記表*2
年俸制で月々分割払いであるこ
とを記載することは可能。

○年俸制 300 万円~
※12 分割した金額を
毎月支給

○年俸制 351 万円~
(月額 27 万円~)
※年俸額の 1/13 を毎月支給
(残りの 1/13 は賞与として
支給します)

○年俸 500 万円+インセン
ティブ
年収例 980 万円
(3 年勤務 31 歳マネージャ
ー)



×年収 980 万円
(3 年勤務 31 歳マネージャ
ー)
⇒年収だけの表記は NG。


[3]最下限の金額表示 

・給与金額に幅がある場合、今回採用された人材に対してすぐに支払われる最下限の金額を記
載する。


・経験や実績、スキルにより給与が異なるときは、その旨の補足表記が可能。
※金額の幅が大きい場合は、給与例を併記するなどして、分かりやすい表現を心がけること。

・学歴別に給与を書き分けることも可能。ただし、応募条件に該当するすべての学歴に対する
最低保障額を明記する必要がある。

○月給 25 万円以上
○月給 25 万円以上 ※この
金額は最低保障額です。
○月給 25 万円以上
※経験・年齢を考慮の上、
当社規定により優遇します。
○月給 20 万~50 万円
月給例 28 歳(入社 5 年目)
月給 30 万円
⇒金額の幅が大きい場合は、
給与例を追記するのが
望ましい。
<応募条件が『学歴不問』
の場合>
×高卒以上:月給 20 万円
大卒以上:月給 23 万円
⇒中卒の最低保障額が不明
のため。
×月給 20 万円
※上記は●年度大卒初任給実

⇒大卒以外の最低保障額が
不明のため。
<応募条件が『大卒以上
もしくは同等レベルの
方』の場合>
×大卒以上 月給 20 万円
⇒「もしくは同等レベル」
とあれば、条件としては
学歴不問と同じ扱いと
なり、全ての学歴に対す
る最低保障額を明記する
必要がある。


[4]一律手当について 

・手当は月給などの固定給には原則含めないが、募集職種で一律支給される場合は含むことが
できる。ただしその旨を必ず明記すること。

・「皆勤手当(精勤手当)」「住宅手当」(一律支給の場合のみ可)「家族手当」など、必ず
しも全員に支給されない手当は固定給に含むことができない。

・残業手当の金額表示、一律固定の残業手当を最下限給与に含むことは原則不可。

※残業(時間外)手当は配属先や職種、または雇用形態により適用が異なる場合は記載できな
い。

(1)給与とは別に支給される手
当を記載する場合

○月給 18 万円+営業手当
(2 万円)

(2)給与に一律支給の手当
を含む場合

○月給 23 万円(一律営業
手当 2 万円含む)
○月給 23 万円(職務手当
含む ※一律)

×月給 25 万円(一律皆勤
手当含む)
⇒場合によっては支給され
ない手当は、固定給に
含むことができない。
×月給 25 万円(一律車輌
手当含む)
⇒「車輌手当」=個人の
車を業務で使用する場合
に支払われる手当であり、
マイカー持込を前提と
した記載となるため。

<東京と九州募集の場合>
×東京本社 月給 23 万円以上
九州支社 月給 20 万円以上+
残業手当
⇒東京本社についても、
残業代の支給が必要。

<未経験者と経験者募集の
場合>
×営業未経験者
月給 20 万円以上+残業手当
営業経験者
月給 25 万円以上
⇒営業経験者についても、
残業代の支給が必要。

★見込み残業代(見込み時間外手当)の表記
・制度としてのみなし残業ではなく、残業をしてもしなくても支払われる「見込み残業代」を手
当として給与に含むことは可能。ただし、以下の条件をすべて満たす場合に限る。
◎ 法律で定められた時間外労働の割り増しを守っている。
◎ 見込み残業時間数が決まっている。
◎ 見込み残業時間数を超えた場合は、別途残業代として支給する。

・給与に見込み残業代が含まれている場合は、その旨と以下 3 点を給与欄に必ず明記する。
① 見込み残業代の金額
② その金額に充当する労働時間数
③ 見込み残業代を超える労働を行った場合は追加支給する旨

※年俸制の場合も、明記必須。
※給与に含まず手当として表記する場合も、明記必須。

※上記 3 点が明記されていれば、「見込み残業代」の替わりに「固定残業代」
「定額残業代」「みなし残業代」などの表現を使用することも可。

※見込み残業代の金額が法定の割増率を 1 万円以上下回る場合には差戻し対象とする。
※1 万円以下であっても、各都道府県の最低賃金を下回っている場合は差戻し対象とする。
※マイナビ転職では最下限給与に対する見込み残業代の記載が必須。

(3)見込み残業代の表記
○月給 25 万円※見込み残業代
(3 万 8000 円、20 時間
相当分)含む。20 時間超過分
は別途支給。
×月給 25 万円(見込み残業代
20 時間分を含む)

○月給 26 万円~32 万円※固定
残業手当 5 万円~7 万円、
30 時間相当分含む。
30 時間を超える時間外労働
は追加で支給。
×月給 22 万円~30 万円(見込
み残業代月 20 時間/4 万円含
む)時間超過分は追加支給。
⇒残業代は基本給をもとに算出
されるため、月給幅を示す場合
は見込み残業代の幅も明示す
ること。

○月給 27 万円※見込み残
業代 20 時間、3 万 5000 円、
深夜割増 10 時間、2 万円を含
む。超過分の時間外労働は
追加で支給。
×月給 28 万円※月給には、月 45
時間分/7 万円の見込み残業
代(休日・深夜含む)を含む。
時間超過分は追加支給。
⇒『時間外手当/休日勤務
手当/深夜勤務手当』は
割増率が異なるため、
月給に含む場合は、それぞれ
見込んでいる時間数と
金額を区別して記載すること。

○月給 20 万円~30 万円
※見込み残業代 20 時間分/
27,000 円~
超過分は別途支給。
⇒「27,000 円~」のように
「下限以上」と分かる表記の
ため可。必ず「以上」「~」
などをつけること。

★裁量労働制・事業場外労働のみなし労働時間制のみなし残業手当の表記
・裁量労働制や事業場外労働のみなし労働時間制が適用されている場合、固定給与額に一律手当
として定額の超過勤務手当(割増賃金)を含んだ記載が可能。

・給与にみなし残業手当が含まれている場合、その旨と以下 2 点を給与欄に必ず明記する。
① みなし残業手当の金額
② その金額に充当する労働時間数

※年俸制の場合も、明記必須。
※給与に含まず手当として表記する場合も、明記必須。
※裁量労働制や事業場外労働のみなし労働時間制の場合、実労働時間の算出ができないため
「みなし残業代を超える労働を行った場合は追加支給する旨」は表記不要。


★一律(定額)夜勤手当・宿直手当の表記
・一律(定額)で全員に支払われる「夜勤手当」や「宿直手当」を給与に含むことは可能。ただ
し、以下の条件をすべて満たす場合に限る。
◎ 夜勤(宿直)の回数または時間数が決まっている
◎ 上記の回数を超えた場合は、別途手当として支給する。

・給与に一律夜勤(宿直)手当が含まれている場合は、その旨と以下 3 点を給与欄に必ず明記す
る。
① 夜勤手当・宿直手当の金額
② その金額に充当する夜勤(宿直)の回数または時間数
③ 上記回数または時間数を超える労働を行った場合は追加支給する旨

※給与に含まず手当として表記する場合も、明記必須。

(4)裁量労働制・みなし労働時間
制のみなし残業手当の表記

○月給 26 万円以上(みなし
残業手当 30 時間分/5 万円
含む)










〇月給 26 万円(一律夜勤
手当 6 回分・6 万円含む。)超過
分は別途支給
〇月給 21 万円(一律夜勤
手当 10 時間分・1 万円
含む。)超過分は別途支給

×月給 26 万円(一律夜勤
手当含む)
⇒夜勤回数・金額・超過分別途
支給の旨を明記必須。
〇月給 20 万円+別途

夜勤手当あり
×月給 20 万円+一律夜勤
手当
⇒一律の場合、給与に
含まれない場合も夜勤
回数・金額・超過分別途
支給の旨を明記必須。

×月給 22 万円~30 万円
(一律夜勤手当 2 万円~
5 万円、夜勤 2~5 回分
含む。)超過分別途支給。
⇒回数や金額に幅がある
場合は一律支給ではないため
給与に含むことはできない。


[5]試用期間・研修期間(見習い期間)について 

◎「試用期間」 …… 従業員としての適格性を判定するため、採用後に試しに用いる期間のこ
と*。
◎「研修期間」 …… 研修を行う期間のこと。


(1)試用期間・研修期間(見習い期間)の長さ・労働条件について
・試用期間および給与が異なる研修期間が設けられている場合は、給与欄に下記 2 点を必ず明
記すること。

◎ 試用・研修期間の長さ(最長期間)。
◎ 試用・研修期間中の給与・待遇条件。
※試用期間中の待遇が変わらない場合も、その旨を明記する。
試用期間について明記していない場合、ユーザーは「試用期間はないもの」「同じ条件だ」とい
う認識をする。試用期間中の待遇が異なる場合は、必ずその旨を記載すること。記載がない場
合、ユーザークレームにつながる。

(2)長すぎる試用期間については注意が必要
・試用期間があまりにも長い場合は、労働者に不利益となるため注意が必要。
・試用期間の長さは会社によって異なるが、1~3 ヵ月程度が望ましく、長くても 6 ヵ月が一般
的とされている。
※試用期間の最長期間について、判例では、1 年を超える期間は不合理とされている。

・判例に則り、1 年を超える試用期間の記載は原則不可とする。

*試用期間は、法律に明文化され
てはいないが、判例により「解約
権留保付労働 契約(解雇権が留
保されている期間)」と位置づけ
られている。留保解約権の行使
は、解約権行使の趣旨、目的に照
らして、客観的に合理的な理由が
存在し社会通念上相当として是
認される場合にのみ許される
(例:経歴偽証など)。

<試用期間中の待遇に変更が無
い場合>
○月給 25 万円
(試用期間 3 ヵ月あり。
待遇に変更はありません)

<試用期間中の待遇に変更があ
る場合>
○月給 25 万円
(試用期間 3 ヵ月あり。
期間中は月給 23 万円)
○月給 25 万円(試用期間
4~6 ヵ月あり。期間中は
月給 22 万円以上)
○月給 25 万円(試用期間
3 ヵ月あり。待遇に変更
なし。)※経験により
期間短縮有
⇒最長期間が明示されて
いれば、幅があってもよい。

×月給 25 万円(試用期間
1 ヵ月あり)
⇒試用期間中の待遇が記載
されていないため。
×月給 25 万円(試用期間
約 1 ヵ月。期間中は
時給 900 円)
×月給 25 万円(試用期間
3 ヵ月。期間中は月給
23 万円。期間短縮・延長有)
⇒最長期間が不明のため。「約」
「程度」などの曖昧な記載も不
可。
×月給 20 万~23 万円
(試用期間最長 3 ヵ月/
基本的に本採用時の
給与と同額)
⇒「基本的に」などの
曖昧な記載は NG。


[6]海外勤務の場合の給与表記 

・海外勤務募集で、給与を現地通貨(日本円以外の通貨)で支払う場合は、日本円レートを記
載する。

・掲載直近の日本円通貨交換レートおよびレート調査時点の日付を必ず記載すること。

○月給 3,000 米ドル
※1 米ドル=82.18 円
(20XX 年◎月◎日現在)

○月給 3 万 5000 ルピー以上
※1 ルピー=約 1.91 円
(20XX 年◎月◎日現在)


[7]給与例表記 

(1)支給給与例
・支給給与例(月収例、年収例、モデル賃金 など)を表示することができる。

・収入(歩合給、業績給、出来高給、能率給、完全歩合給、完全出来高、報奨金、決算賞与な
ど)を保障するような表現は原則不可。

・支給給与例を男女別に記載することは不可。 ※「男性のみ」「女性のみ」の給与例も記載
不可。

・今回の募集における最低保障給を下回る支給給与例は記載できない。
※最賃の改定が毎年 10 月にあるので、必ずチェックすること

(2)歩合制
・固定給との併記ならば、歩合制の記載が可能。
・完全歩合制は労働者の募集には当たらない。
※完全歩合制については、業務委託の募集ならば可能。
詳細は、 ≪3. 雇用形態→[2]各雇用形態の定義と原稿作成上の注意点→(8)業務委託→
(1)業務委託の「給与」欄の表記について≫の項を参照のこと。

×25 歳 男性 月収 30 万円
⇒給与例を男女別に記載
することはできないため。













○月給 15 万円 +歩合給


[8]モデル年収例 

・今回の募集に対して支払われることが想定される年収額を記載する。

・募集職種において、昇格後などの将来的な想定年収額を記載することも可能。

・募集職種のモデル年収例を記載した上で、別職種のモデル年収例を記載することも可能。

・給与例を男女別に記載することは不可。
※「男性のみ」「女性のみ」の給与例も記載不可。

×年収 400 万円
月給 25 万円+諸手当
(入社 2 ヵ月)
⇒「入社 2 ヵ月」の従業員
の年収例は不明なので
不可。入社後 1 年以降
の従業員の年収例を記載。

<営業職の募集の場合>
×年収 400 万円/28 歳
事務職/経験 5 年
⇒今回の募集に関係のない
別職種のみの年収例は
記載不可。

<最低保障額が
「月給 20 万円」の場合>
×年収 220 万円/23 歳
営業職/経験 1 年
⇒固定給部分は、月給 20 万円
以上
×12 ヵ月=年 240 万円以上。
下限を少なくとも 240 万円以
上に修正が必要。